虹の橋立を黙視で確認するのは簡単だが、辿り着くまでの道は険しい。
ここから徒歩で数日は掛かる距離であることが予想される上、いつ治安隊と遭遇するとも限らないのだ。
一夜の内に虹の橋立まで到達するのは不可能だ。
普通の人間ならば。


「そういうことだ。
俺達は『奏者』。
当然、鳴流神で移動する。
服装など関係無いと言った意味が分かったか?」


「流石に何日も掛けているほど俺達は暇じゃないからな。
となると、ここは飛行できるストレグンの出番だな」

「その通りだ、スネア」

バードが帽子から白い羽根飾りを抜き、トオンの紋章を描く。

(ウズメ、今行くぞ!)


想いを胸に、召喚呪文を詠唱するバード。

「暗黒を震わせる勇……」

「そこまでだ、裏切り者!」


「!!?」

気付いた時には遅かった。
漆黒の武者鎧に身を包んだ治安部隊が三人を取り囲み、槍の穂先を突き付ける!

やがて囲みを割って、一人の鎧武者がバードの正面に歩み寄って来る。
一人だけ色の違う、赤糸縅鎧の武者………
この者が治安部隊を率いる隊長なのだろう。

「バード……
よくものこのことジョウルリに戻って来られたものだな、貴様!」