真夜中の海岸沿いの街。
人の気配を感じない路地を、影のように忍びながら歩く三人。


「………しかし俺の服装はともかく、この国でバードとソナの格好は思い切り浮いてるな。
着替えたらどうだ?
このままじゃ潜入もへったくれも無いぞ?」

スネアが以前、ハイハットの街を発つ時に食堂の女将から貰った服はジョウルリ製であるため、そのままジョウルリの街を歩いていても違和感が無さそうだ。
しかしバードは鐔広の赤い帽子に薄汚れたマント、ソナは上下に分かれたフェルト生地のツーピース。
どこをどう見ても外国人だとバレバレだ。


「だから夜中に潜入することにしたんだ。
俺達の服装が目立ちまくることぐらい、承知の上だからな。
まだジョウルリには電気が通じていない地域が多々ある。
住人が夜中に出歩くことは少ないのさ。
………見えた。
あそこに恐ろしく高い塔があるのが分かるか?
あれがジョウルリを統治する中枢、『虹の橋立』だ」

「虹の……
じゃあ、あそこにジョウルリの姫が居るんだな?」


(居る、か………)

思わずスネアの言葉を心の中で繰り返すバード。

(『居る』のとは少し違うな。
『出られない』んだ、彼女は)