「精霊よ、少し聞きたい」
託宣が終わるのを見計らい、バードは精霊がソナの身体を離れる前に尋ねた。
「一つ、海を渡った先に居る奏者は複数なのか?」
『………いかにも』
精霊の答えは短かった。
(どんな奴が何人居るのかは、自分達の目で確かめて来い……
そう言いたいのか)
バードは続けて次の質問をぶつけた。
「もう一つ。
貴方は何者だ?
そろそろ正体を明かしてくれても良いんじゃないのか?」
『…………』
精霊は答えない。
やはり正体は明かせないというのだろうか?
だが、精霊は一言だけバードに告げた。
『全ての奏者揃いし時……
全ての奏者の心が一つと成りし時、その問いに答えよう』
「!!」
奏者の心が一つになった時。
恐らくそれは、バードに向けて言った言葉だ。
常に冷静を装うバードの心の奥底に秘められた、シジマへの復讐と憎悪に燃える炎。
それを精霊は見抜いていた。
『……ではさらばだ。
汝らの旅の行く末に、幸福の調べが聞こえ来ることを願わん』
精霊は去って行った……