……………
あれから一週間後。


「ねえねえ、バードぉ♪
あそこの店から美味しそうな臭いがするニャ♪
お腹空ぃいぃたぁあ〜!
食ぁべぇてぇ行ぃこぉおうぉようおぅおぅ」

「………少し黙ってろ」


険しい山を越えて街に辿り着いたバードは、往来を年頃の娘と共に歩いていた。
……いや、語弊がある。
足早に歩くバードの後ろを、娘が着いて来ている。



この娘とバードが出会ったのは、楽機アコーピオンを倒した翌日。
宿を探しに入った街の外れ、そこで数人のチンピラに襲われていた美しい娘をバードが助けたのが切っ掛けだった。


歳は17、8だろう。
衣服をボロボロに破られ、泣いてうずくまる娘を見兼ね、バードは服を買い与えた。

「……?
お嬢さん、ケットシー族か」

娘の亜麻色の髪からピョコンと小さく飛び出している二つの猫の耳を見付け、バードは尋ねた。


音界スコアで通常の生活している種族は人間だけでは無い。
極めて少数だが、亜人間種族も存在している。

ケットシー族も亜人種族の内の一つであり、猫のようにしなやかで華奢な体と身軽さを持つ。
外見的な特徴として、瞳が赤くて頭に猫耳状の突起を持ち、尻から長い尻尾を生やしている。

ケットシー族は全般的に陽気で愛想が良く、人懐っこい。
普通の人間の感覚からすると、若干ウザいと思われるぐらいである。