『復讐………かな』


会話の流れは、そこで一度切れる。
耳を疑う返答に、デヴァーシャが一瞬抜刀するような仕草を見せるが、すぐにストレグンはそれを察して手で制する。

『ジョウルリが平和な国になったのは最近の話だ。
かつて……
この国は小競り合いする複数の勢力が点在し、常に戦乱が絶えなかったという。
それを武力で統一させたのが、初代ジョウルリ君主……
つまりウズメの先祖だ。
暴君の異名が示す通り、初代ジョウルリ君主は反乱分子を力で捩伏せ、滅ぼし、蹂躙した。
滅ぼされた多くの人々はジョウルリに平伏し現在に至るが、先祖の怨恨を受け継いだ者達も少なからず存在するだろうな。
お前もその類か?』


ブラスオの白く輝く瞳。
その奥に潜む暗い情念の炎が、一際激しさを増したように思えた。

『俺の一族は、ジョウルリの非道なやり方に最後まで抵抗した。
その結果……
先祖の土地は武力で奪い取られ、男は公開処刑。
女は………言わなくても分かるだろう。
だから俺の血には、誇り高き先祖と憎むべきジョウルリの血が混ざりあっているのさ』


それを聞いたバードは、つくづく奏者の持つ業の深さを感じていた。

(奏者に選ばれる奴ってのは、呪われてるのか?)