「っえぇ!
あの事件起こしたの、
勝田さんなんすか!」


「………」


1人興奮する後輩の中野をを無視し、
勝田伸也は煙草に火をつけた。



「もー有名っすよ、
槙原直樹の衝突事件」



槙原直樹。
その名前に、
一瞬反応するのを隠すように、
伸也は煙草の煙を中野に吹きかけた。


「うわっぷ!
あ、一本ください」


「…しょーがねぇ奴」



中野に煙草の箱ごと投げてよこすと、
伸也はバイクに跨がった。



「どっか行くのか?」


仲間の早瀬が声を掛ける。


「…散歩」


真っ昼間の街の人だかりを、
バイクのエンジン音が突き抜けた。