稲妻が走った。

茜の言葉は耳から入り、脳を焼き付くし、全身を痺れさせる。

私は感動したのだ。

茜の言葉は極端ではある。人によっては考えなしと言うだろう。

だがそれがどうした?

どんなに正確だろうが予想は現実じゃない。

どんなに正しかろうが理論は真実には届かない。

茜はそれを知っていたのだろう。本能で理解したのかもしれないが……。

真理だ。

そうとしか言いようがない。

どれほど考えても答えがでないなら。

何も考えないことが一番正しいのではないだろうか。

どれほど迷っても道が見えないなら。

とりあえず前に一歩踏み出すべきだ。

私は茜を見つめる。

茜の瞳に映る少女は、感激にうち震え、潤んだ目を輝かせていた。

「茜の……、茜の言う通り!」

私は知らないうちに握り拳を作っていた。

そんな様を見て、茜は呆れたような、それでいて安堵したような声音で、

「そう、良かった」

と言った。

そして、コーヒーカップを手に取り、口許に近づけながら確認をする。

「これで悩み解決ね?」

そう問いかけ、カップを傾けた。

だから、私は感謝と尊敬の念をこめてはっきりと答える。

「ううん、まだ悩んでる!」

『なにぃいいいいいいいい!』

茜と詠美が叫んだ。

力一杯叫んだせいか、直後にテーブルに肘をついて脱力する。

詠美にいたっては頭を抱えるていう動作付き。

私はあまりに大きかった二人の叫び声が恥ずかしく、ちらりと周囲を見回した。

何事かといった風に、ひどく迷惑そうに他のお客さんが視線を注ぐ。

うう、すいません……。

目を逸らして私は心の中で小さく謝った。