散らばった紙を拾う目の前の男性はの姿に私は心を奪われた。

整った目鼻立ち。雪のように白い肌。

まるでマンガのキャラクターみたいな非の打ち所のない顔立ちだった。

「大丈夫ですか?」

列車の床に落とした紙を広い終わった彼が、私に手を差し伸べてくれた。

私はハッとして彼の手を握る。

ひんやりと冷たい手は、その細く長い指のせいか、ひどく繊細に思えた。

だがそんな印象とは対照的に、私を力強く引き起こす彼。

「あ、りがとう……ございます……」

私は彼の顔を見つめてしまっていた。

そこに響く警笛。車掌が吹く発車の合図だ。

名残惜しいが、乗らないと。

そう思ったとき、私はホームに散らばる白い紙に気付いた。

私とぶつかったせいで彼が落とした紙は、列車の中だけでなく、ホームにまで広がっていたのだ。

「ご、ごめんなさいっ!」
そのことに思い至って、大慌てでしゃがみこんで紙を拾う。

「あ、平気ですから」

そう言って彼も屈み込んだ。

そのとき、

『――あ』

二人の指が重なった。

全くの偶然。

ただそれだけのこと。

でも……。

私は顔が赤くなることを。


――抑えられなかった。