「でも、問題はそこからどうするか……」

詠美の言う通りだ。

私が翔をす、好き……なのはたぶん、きっと、おそらく、高確率で正しい、と思われる。

まさか、私が、こここ恋を語ることになるとは!

恥ずかしくて、顔が赤くなって、それがさらに恥ずかしい。

まさにスパイラル。

いや、今はそんな私の個人的な心の機微は置いておこう。

目の前の問題を解決しないかぎり、精神の揺らぎなど無意味なのだ。

「問題? あるの、そんなの?」

茜は詠美に問いかける。茜の性格からすれば当然だ。

彼女のメンタルは強い。それこそ私や詠美とは比べ物にならないほど。

その差はなにか?

決断力だ。

と言っても、物事を決めることが速いのではない。

決めたことに対する自信の強さ。それが茜と私の決定的な分かれ目だ。

茜は後悔しない。選んだ結果が間違いだったとしても、選んだことを後悔しないのだ。

ただ反省する。正解を選べなかった自分を呪い、次は正しい答えを導こうとする。

そんな茜には、私の現状に対する根本的な問題は理解できないだろう。

私は、そう思うからこそ、茜に説明する言葉が見つからなかった。

だが、そこで再び詠美が助け舟を出してくれる。

「不安なのよ、梨花さんは」

「不安? 相手に彼女がもういるんじゃないかとか?」

詠美は首を左右に振る。
ますます分からないといった表情を茜は作った。

「じゃあ、何?」

「もっと根本的なこと。つまり……」

詠美は一度、確認するように私の顔を見た。

視線の合った私は無言で頷く。

頷き返した詠美は、再開した。

「つまり、梨花さんは今の気持ちが、本当に相手に向けられた恋なのか不安ってこと」

正しくその通りだった。