「私は梨花に隠し事なんかない。それは梨花を信頼してるから」

私は真っ直ぐな茜の視線から目を外しそうになってしまう。

胸の内で自分を叱咤した。

茜は今、私のために真剣に話してくれているのだ。

そこから逃げるわけにはいかない。

それは茜の気持ちへの裏切りだ。

私が茜を親友と思う以上、ここで逃げるわけにはいかなかった。

「隠してるつもりはないの。ただ――」

「ただ?」

茜の問いに私は一度唾を飲み込む。

周りにも聞こえそうなほど大きな音がした。

「……ただ、あんまり言われたくないだけ。まだ、私自身が、今の気持ちを理解しきれてないから」

「……そう」

茜は考え込む。

その間、私は黙って次の言葉を待った。

「私から見れば、梨花の言動は恋する乙女のそれよ?」

「そんなこと言われても……。本当に分からないの。会ったばかりで、お互いよく知らないし」

うーん、と唸り首を傾げる茜。

だが、分からないことばかりなのは私も同じなのだ。

そこで茜は、他の人間の意見を聞いた。

「詠美は、どう思う?」

「う〜ん……」

詠美も難しい顔をした。

この中で一番頭の良い詠美でさえ、頭を抱える問題なのだ。

「解決策が見えてこない……」

「分析はできたの!」

茜が驚愕の声を上げた。

私は驚きすぎて声にならない。

私を見据えて詠美は語る。

「梨花さんは、たぶん一目惚れの存在を信じられないんじゃないですか?」

「どういうこと?」

茜が詠美に疑問を投げかけた。

なにも言わず詠美の話に聞き入っている私。

詠美は茜に解説を始める。

「答えは、梨花さんの発言の中にあったの」