『何!』

「いや、2人揃って迫ってこないでください」

『早く!』

「わ、分かりましたから! 離れてください! 怖いです!」

詠美の悲痛な叫び。

気付いたら私は詠美に驚くほど接近していた。

茜もテーブルに身を乗り出している。

詠美は私を押し返すとはっきりと言い切った。

「いつもの言い訳がでないんですよ」

「あっ!」

「は?」

正反対の反応を返す私と茜。

全く意味の分からない私と、酷く納得した風な茜。
茜は手を叩きながら、

「ああ、ああ。そういうことか」

「うん。茜はいつも突っ込む側だから、物足りなく感じたのよ」

全く理解できない私がいる。

この意思の疎通が幼馴染みパワーというものだろう。

2人は小学生の頃から同級だったらしい。

クラスメイトになったのも一度や二度じゃないとか。

だから、私たち3人の関係は、少しややこしい。

私と詠美は先輩後輩。詠美と茜は同い年の幼馴染み。茜と私はクラスメイト。
ほら、ややこしい。

まあ、楽しいから良いんだけどね。

でも、詠美はどんなに仲良くなっても、親しき仲にも礼儀ありって、未だに私に対して敬語が入ってるけど。

「……でも、どういうこと?」

「やっぱりそういうことじゃないかな」

2人で勝手に納得するなっつーの!

「だから! 何!」

私はたまらず強い口調がになってしまうのが抑えきれない。

でも、2人はそんな私にどこか白けた顔を向けた。

「……あれね。意外と本人は気付かないものね」

「やっぱり無自覚なんだと思うよ?」

全く意味が分からない。

私には2人のような幼馴染みスキル持ってないから。

こんなことなら幼馴染み作っておくんだった!

「簡潔に! 答えて」

だんだんイラついてきた私。

そんな私に2人は至極あっさりと、

『好きな人ができた』

口を揃えてのたまった。