「わぁ…いけない!」
せっかく時間をかけて造り上げたメイクが崩れてしまうと思い、慌ててティッシュで目の周りの涙を拭き取った。
少し手直しをして、朝食をとりにリビングへ向かった。
「お母さんおはよー」
キッチンに立っている母親に声をかけた。
やはり母も弘輝と同じように、穂香の顔をじっと見た。
うまく言葉をつなごうと穂香が必死に考えていると母が先に口を開いた。
「穂香おはよう。今日から新しい学校だけれど……なにも無理することないんだからね。穂香は穂香らしくしていればいいの」
少し間をおいて、母はいつもの調子で言った。
「それ運んでもらってもいい?」
と、目玉焼きののったプレートを指さした。
お母さんの温かさに穂香はまたしても涙が出そうになった。


