いきなりのことで最初何が起きているのかわからなかった。

だけど頭の上をバウンドする手から、頭をポンポンとされているのだとわかった。
耐え兼ねたような笑い付きで。


なんなのよ、これは…!

「な、何すんのよッ」

あたしは別の意味で赤くなりながら、頭にある手を退かそうとする。

「いや」

さすがだと思って、といまだ可笑しそうにしている。

何がよ!
なんでそんなに笑って―――

手の力が緩んだ隙にあたしは漸く顔を上げる。


彼の顔を見た瞬間に固まってしまったのは驚いたから。

ニヤリでも意地悪そうな笑みでもなく。
目の前にいるのは、子供のように破顔している有栖川ルイ。


あたしの頭を絶えず撫でる手。

いつものあたしだったら絶対突っぱねてる。

…だけど、そんなこと出来なかった。

あたしが大好きなお父さんのと手つきが似てたからなのかもしれない。
何故だかそれ程、その手が優しく感じられたから。


昨日から見てきて、ついさっきまでの有栖川ルイとはまるで別人のよう。

自分でもわからないけど、胸の奥のほうがキュッってした―――


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