その声は間が悪いことにどうやらバルコニーの下で立ち止まり、泣き続けた。

下は中庭になっており、大方石段にでも腰をかけているんだろう。

俺は正直うんざりしたが、そのうち泣き止むだろうと無視を決め込んだ。


―――が。

一向に泣き声が止む気配がなく、挙げ句酷くなるそれに、さすがに我慢が効かなくなってきた。
無能(バカ)の対応に辟易としてイラついていた。

心の中で舌打ちを打つ。

漸く一息つけたと思ったのに。

俺は深いため息をつくと、しゃがみ込んだ身体を起こした。

ここは早いとこご退席願うことに尽きる。

俺は手すりに手をかけ、空(クウ)に身を投げた。


軽く着地を決めると、石段でうずくまる一人の少女らしき女と目が合った。

少女の目は涙を纏いながらも、大きく見開かれていた。


(……どこの令嬢だ、こいつ)

少女はシンプルなドレスで着飾っているが、ところどころ乱れており、特に足元はどろどろに汚れていた。

俺が目を細めると、少女は小さく息を呑み、まるで地球外生物を見たような顔をした。


(……、なんだこの女は)



――今振り返ると、このアホくさいパーティーの開催を進言した下心満載のアホ共に感謝しなければ。

…そうでなければきっと出会うこともなかったから。

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