Don't leave

メニューとお水が運ばれてきて、私は早速メニューに目を通す。


…やっぱりケーキだな…

「結子、パスタやリゾットもあるけど?」


つかささんがメニューを見ながら言う。


確かにパスタも美味しそうだし、リゾットも悪くない。

でもそんなに空腹ではなかったし、ケーキが食べたかった。



「やっぱりケーキが良い。それからカフェオレ。」


つかささんは、ほらやっぱりそう来たか、という表情で笑う。


わ、悪うございましたね…ケーキ好きで…



つかささんはケーキとコーヒーにして、注文する。


ウエイターが去って、私達以外にはお客のいないテラスはしん、としていた。


波の音だけが規則正しく耳に入って来る。


今日が薄曇りで良かった。

だって快晴でお日様ジリジリだったら、きっと暑くてテラスでお茶どころではないはず。



私は海をぼーっと眺めながら、煙草を吸って。


ああ、心の洗濯になる。


昔はよく海に来て、砂浜に座り込んで波の音を聞いていたっけ。

それだけで気持ちが穏やかになったから。



でもここ何年か、いや…10年単位かもしれない、そんな時間を持った事はなくて。


何もしなくても、ただこうやって日常から離れて、海を見ながら波の音を聞いて…



癒される。


私、どれだけ自分をおざなりにして来たんだろう。

どれだけ自分を抑えつけて生きて来たんだろう。

でも、生活してくのに必死な、子持ちの母親には自分を大切にする時間も…お金の余裕も無いのが当たり前で。