Don't leave

――思考はいつだって彼の事になりがちで、だから私はよく思い出したなと思った。



つかささんの事で頭がいっぱいだったのだけれど、すれ違った学生の会話の切れ端で、頭に電流が走ったのだ。



『その色鉛筆がね…』



色鉛筆という単語が私の中のスイッチをオンにする。


「んあ!お姉ちゃんの色鉛筆、冬休み中に補充しとかなきゃ!忘れてた!」



不足分を紙に書き出しておきなさいなどと偉そうに言いながら、自分はすっかり忘れている。


明日1日しかない。


明日はつかささんに頼んで、忘れないうちに文房具屋に寄ってもらわなきゃ!



さっきまではつかささんの事を考えていたのに、瞬時に色鉛筆の事に切り替わって。


忘れないように呪文のように唱える。


色鉛筆色鉛筆色鉛筆…



帰宅して、色鉛筆の不足分を書いたメモを、そこいら中ひっくり返して探す。


「あった!これだ!…って何これ汚い字…」


「ママもしかしてまだ色鉛筆買ってないの?」


「明日買うわよ必ず!」

自分の物忘れの激しさに呆れながら、明日は必ず、開口1番に色鉛筆の事を話さねば、と思った。