高校1年の丁度、今と同じ、夏が終わり始めた頃、ボクは彼女にひと目惚れをした。

千曲川沿いの800mぐらいの通学路

彼女は突然、目の前に現れて、魂を抜き取る妖怪のように、ボクの心を奪っていった。

キーッ!と鳴る自転車のブレーキの音

ボクは石化したまま 彼女を見送った。
一瞬の出来事だったがスローモーションのように思えて、時を長く感じた。


その日以来、遅刻魔なボクは消え去り、1時間目がサッカーじゃない日も、定時に学校に行くようになった。
餌を撒かれた鳩のように・・

ボクは、毎朝、何度となく、彼女の自転車の行く先を遮り、声をかけようとした事か

しかし、現実は、何も出来ないまま。
気が付けば、時は過ぎ、1年も経とうとしていた。

人間を1年もの間、片思いし続ける事は、ボクにとっては、もうないだろう。
何故なら、女好きだからである。

すでに、正直、諦めていたのも事実だった。彼女は、すでに、リアルで会える
ボクのアイドルと化していたのである。

1年も時間は、あったのだから、いろいろ考えた。

転んでみようか?
すみませんと声をかけてみようか?
この場で、今、地震でも起きないだろか、何か偶然が起きないだろうか?( ̄▽ ̄;)

妄想だけが先走りして、結局、何ひとつ、行動に移せない。

今思えば、馬鹿げた話である。

答えは単純だ。
ボクは恐怖を感じていた。
この幸せな朝が終わることに・・・

だから、声をかけないと言う選択を毎日してきた。

だって、そうでしょ? そこで引かれたら、すべてが終わる。

恋とは支配である。
彼女の支配の中に、ボクは繋がっていたかったから。


だが、運命とは、皮肉なもので

大事に大事に
消えないように
無力な手で守ってきた灯火は、突然、燃え上がる。