妹は几帳面、勤勉で優等生だった。朝は父の車に乗って中学校に通っていた。小学校時代は、ボクはよく比較され、親に怒られたものだ。そんな妹に小学5年生の時、一緒に通っていた、そろばん塾で級を抜かれた。ボクの方が半年も前に入塾していたのにだ。妹が2級へと合格した日。
とても残酷なことをした。
ボクは親が留守な時に台所から包丁を取りだし、妹を脅した。「お兄ちゃん!やめて!!」とリビングを叫び逃げ回る妹を追いかけ回し、いじめた。ボクは泣きじゃくる妹を見て微笑みを浮かべ、優越感を味わっていた。


こんな澱んだ家庭の朝食は、昨日の残り物か、食パンとバターが主だった。その日は、昨日のカレーライスが残っていたので、電子レンジで温めもせずに口に運んだ。


もしかして、私が未だに冷たいカレーライスの方が好きな事にも関係しているのだろうか

ボクはカレーライスを食べ終えると玄関に向い、朝日の扉を開ける。

360度、山森の豊かな緑色が眼に飛び込んでくる。長野県上田市の中でも田舎のボクの生まれ育った大地。コンビニまで、歩いたら1時間以上はかかる。近代的な物といえば、山から山へと掛け渡る電線の鉄塔だけだろうか。夜になると、この豊かな景色は変貌し、恐ろしい暗闇に覆われ、潜む山達が怪物のようにさえ見える。しかし、外灯がほとんどない分、空は小惑星が見えてしまいそうなほどの天然のプラネタリウムと科す。

今は真青の空に南に渡る鳥達のように雲が流れている。
北風を感じると
もうすぐ、本格的な冬がやってくるのだなと匂いだす。