愛しのマイ☆ドクター

僕は約束どおりに

美羽の部屋に行くために

なんとか仕事を8時までに

無理やり終わらせた



仕事の内容に

手を抜いたつもりはないけど

医者としては

ほめられたことではないなあと思った



でもそんなこと

美羽の病室に

一歩入った瞬間に

忘れてしまうほどだった



『あっ 先生ー

ほんとに来てくれたんだー』



『そりゃ 約束したからさ』

と言って僕は

美羽のベッドの横の

イスに腰掛けた



美羽は起き上がって

ベッドの柵を背もたれにして

ノートパソコンをいじっていた



おそらく事務所の誰かが

差し入れ兼ブログの更新でも

させようという意図なんだろう



『今ね 美羽のブログ更新してたの

たくさんファンの人が心配してくれてるから

普段書けないメールの返事を書いてたの』



(へえ プロなんだなあ)



僕は

若干15歳の少女の

その意識の高さに心から感心した



『美羽ちゃんはファンを大事にしてるんだね』



『あたりまえじゃん

みんな美羽のこと思ってくれるんだから

美羽は美羽にできることでその気持ちを返さないと

ばちがあたっちゃうよ』



『ふうん・・・ えらいねえ・・・』



と僕は思ったことを

正直に口に出したが

美羽はそれには応えず

しばらくメールの続きを書いていた



『ねえ 先生』



美羽は急に目線を上げた



もう何回も同じ仕草を見てるのに

そのたびに僕はどぎまぎしてしまう



『うん?』



『先生って彼女いるの?』



『ええっ!? 何 いきなり???』