僕はその夜家に帰らずにずっと美羽のベッドの横にいた



彼女はずっと安らかに寝息を立てていた



彼女の全身に幾重にも連なる医療器具が一定のリズムで彼女の生命がまだ活動していることを告げている





やがて朝になって検温に来た岡崎さんが僕を見てびっくりした



『先生・・・ ずっといらっしゃったんですか・・・』



『はい・・・』



『少しお休みになったらどうですか? 先生が体を壊されたら美羽ちゃんも気落ちしちゃいますよ・・・』



『あぁ・・・ あとで少し休息をとることにします・・・ それより岡崎さん』



『はい・・・?』



『もう院長先生には伝えましたが 美羽の治療はターミナルケアに切り替わることになると思いますので 宜しくお願いします』



少しだけ間があったけど岡崎さんはすべてを察してくれたようだった



『・・・・・わかりました』



と言って検温を始めた




僕はそれを横目で見ながら美羽の病室を後にした




そして向かいの美羽のお母さんの病室をノックした



コンコンコン



『どうぞ』



美羽のお母さんの声がした



『朝早くからすみません』



美羽のお母さんはもう起きていたようでベッドに座ってテレビでニュースを見ているところだった



素顔もとても綺麗な人だなとあらためて思った



『どうされたんですか・・・?』



『美羽・・・ちゃんの治療のことなんですが・・・』



お母さんはリモコンでテレビを切って僕に向き直った