『わかった 後で必ず見るよ あとは何かして欲しいことはある?』



美羽は最後の力を振り絞るように言った



『せ・・・ん・・・せ も・・・う・・・ち・・りょう・・は・・・いい・・から』



『えっ?』



『ター・・・ミ・・・ナル・・・ケア・・・に・・・して・・・』



(治療はいいから・・・ターミナルケアにして・・・って・・・)





ターミナルケア・・・





終末医療・・・





末期の患者さんや老衰のお年寄りに行う

医療的処置よりも身体的、精神的苦痛を和らげるための措置・・・



簡単に言えば

できるだけ痛みや気苦労なく

あの世へ送り出してあげるための医療・・・





美羽がそんな用語を知っていたのにもびっくりしたけど

それを希望していることをはっきり口にしたのは

やはりショックだった



『美羽・・・ターミナルケアって・・・でも・・・』



『せ・・・ん・・・せい・・・ そ・・・れ・・・み・・うの・・・さい・・・ごの・・・お・・・ねがい・・・』



『わかった・・・ わかったから・・・ 院長先生とお母さんに相談するから・・・』



『う・・・ん・・・』



美羽は僕の言葉を聞いて安心したのか

また目を閉じた



もう夜の九時を回っていたが

僕はすぐに院長先生に

電話をかけた



『もしもし どうしましたか?』



院長先生はすぐに電話にでてくれた



『咲原美羽がターミナルケアを希望しています 先ほど本人の口から聞きました』



『・・・』



電話の向こうで

難しい顔をしている

院長先生が思い浮かんだ