家に着いて部屋に入ると、ベッドに横になって山越さんの事を思い出した。


花屋に居たのに、結局花買っていかなかったし。

待ち伏せみたいだったし、やっぱり俺の事好きなのかなぁ。

本の趣味合うぐらいで話したいと思うか?


顔を思い浮かべて、結構かわいいかも、と思った。

私服姿にも少しドキリとさせられた。



「おい、ご飯だとよ」

突然開いたドアと声に、ビクリと体が跳ねた。

「びっくりしたー」

「変な妄想でもしてたか?」

「違ーし!」


俺はにやける兄貴に蹴りを入れようとして、上手くかわされた。

兄貴は高校3年生。

私立高校に通っていて、かなり優秀だ。

大学も、推薦で法学部に入ることが内定している。


「逃げんな!」

「うるせーガキだなぁ」


俺は兄貴にそう、からかわれる事が腹立たしかった。


親でも兄貴でも、俺は子供扱いされる事が大嫌いで、少しでも大人に見えるようにと難しい本を読んだり言葉遣いをしたりしている。


だが、やっぱり家族で一番年下の俺は相変わらず子供扱いを受けていて、俺は早く大人になりたいと強く願っていた。