部屋に戻って、あの赤い本を手に取った。



ベッドに横になり、まだ新しいその本を開いた。


内容はやはり、題名通りの恋愛小説。


あんなカッコいい推理小説書く人が、恋愛なんて書けるんだ。


『長川探偵H』のスリルとは違う、女子が好きそうな恋愛独特の甘ったるさが鼻につく。



主人公は21歳女子大生。
カフェでバイトをしていて、いつも花を持って訪れるお客さんに好意を抱く、というものらしい。


最初の方は、主人公の大学生活が描かれていて少し興味を持って読み進められたが、やはり女視点の恋愛物はどうも共感しにくい。


30ページほどで、本を閉じた。




山越さんに何て言おう。

女の子の恋愛小説って難しいね、


うーん。


正直にあまり面白いとは思えなかった、と言ってしまおうか。


いや、それでは流石にマズいだろう。


せっかく話し掛けてくれたんだから。





また後で暇つぶしにザッと読んで、適当に感想を言おうと思った。





「おい、スーパーマリオ買って来たからやるぜ」

「い、やったー!」


相変わらず、ノック無しの不躾な兄貴に誘われて、俺はベッドから飛び跳ねた。