「…なんだよ、お前。春花のくせに」
冬真が目を細めてじっとりと睨むようにあたしを見た。
「春花って、春の花だろ?桜だろ?」
なんて変な理屈をくっつけられてて。
「俺は桜が好きなんだよ!お前は春花のくせに桜好きじゃないの?」
「べ、別に名前は関係ないじゃん」
なによ春花のくせにって。確かにあたしは春生まれで、だから春花ってつけられたらしいけど。だからって桜が好きとか……いや別に嫌いじゃないけど。むしろ好きだけど。
「四月かぁ。じゃあ卒業式終わってるじゃん」
冬真の言葉に息が詰まりそう。卒業なんて言葉聞きたくない。特に冬真の口からは。ああ、こんなこと考えて馬鹿みたい。そっか。あたしは、卒業したくないんだ。なのに冬真が卒業なんて単語出すから。卒業したら離ればなれなのに。
「あたしは雪のが好き。」
ああ、またあまのじゃく。ああ、可愛くない。
「ってか、卒業式とか桜が咲こうが雪が降ろうがどーでもいいよ。」
そしたら冬真はボソッと「かわいくね」って呟いた。いいもん。どっちでも。てゆうか、春なんかこなくていい。

