内心、あたしは焦りまくってて、沈黙にならないように、冬真に先に喋られないように口を開く。
きっともうすぐ卒業だとかお別れだとか、柄にもなく考えてたから調子狂っちゃったんだ。
あたしの質問に「あー…」と首を傾げて唸る冬真は苦笑いした。なにその微妙な反応。どーせいつもの思いつき行動じゃないの?
「えっとさ、俺さ、この海の見える遊歩道すきなんだよね」
海からふく冷たい風が顔にあたって、冬真は鼻をすすった。
「そんで反対向いたらあっちに桜並木が見えんじゃん?なんか贅沢な感じしない?」
照れくさそうに笑う冬真に胸がぎゅっとなる。そうだ、あたし…冬真のこういう飾り気のないところを好きになったんだ。
「まだ咲いてないけどね」
なのにあたしってば、いつだって可愛いげがない。
「三月になったら咲くんじゃね?ほら、温暖化とかで開花シーズン早くなってるかもしんないじゃん」
「咲くわけないじゃん。桜はだいたい四月でしょ」
だから、なんでそうだねって可愛く話に乗れないんだ、あたしは。

