「さぶっ!何で海なのよ!?馬鹿冬真!」
確かにどっか行きたかったけど、海とか有り得ない。あたしが寒がりと知っての行為なの?確信犯なの?どっちにしろ、寒い…。
「海っていうか俺はこの遊歩道に来たかったの」
口を尖らせる冬真だけど、あたしにはどっちでも寒いことには変わりなくて。可愛くないとは分かっていても文句を言ってしまう。
「あー、さぶいさぶいさぶい」
「俺があっためてやろっか?」
「へっ!?」
「……なーんて、じょーだん……あれ?」
おどけたように舌を出して笑う冬真に、しまったと思った。冬真のふざけた冗談なんていつものことじゃん。いつもかわしてきたじゃん。なのに今更なに間に受けちゃってんの、あたし。馬鹿、馬鹿、馬鹿。
「……は、春花ちゃん…?顔が赤いよ…?」
言わないでよ。分かってるってば。顔に熱が一気に集まって、体温が急上昇してる。
「さっ、寒くて乾燥してんのっ」
マフラーをぐるぐるに巻き直して息もできないくらいに顔を隠す。ぷいと視線を逸らすあたしに冬真は「あ、そう…」とだけ呟いた。
「…で、なんで海なの?」

