CHERRY BLOSSOM



写真を頼んでるみたいだった。照れ臭そうに笑う冬真に胸がいたくなった。苦しい。


なに、話してるんだろう。無意識に足が動いてしまう。


「春花せんぱーい!」


後ろから叫ばれた自分の名前に思わず振り向けば、そこにいたのは仲良くしてた後輩だった。


「卒業、おめでとうございますっ」

「ありがと!」


花を渡して一緒に写真を撮ろうという後輩に、無理矢理笑顔をつくる。


「あれー、先輩ってば目に涙ためちゃって。わたしも先輩が卒業しちゃうなんて寂しいですー」


その言葉に胸がドキリとする。違うんだよ。この涙は、そんな綺麗な涙じゃない。これは、嫉妬の涙だ。


もう冬真の姿はそこには見当たらなくて、小さく絶望する。後輩の「高校いっても頑張ってくださいね」っていう言葉すら、耳からすり抜けていった。


高校。あの子は冬真と同じ高校に行くだ。そればかり頭の中をぐるぐると巡る。