それからすぐに式は始まった。やばい。卒業式なんて、とか思ってたのに、実際この場にいるとやばい。送辞の言葉やら答辞の言葉にすっかりやられ、歌をうたう頃にはボロボロに泣いていた。
卒業証書を貰って、体育館を出ると在校生達がアーチをつくってくれていて。紙で作った造花の花を降らせてくれる。
当たり前だけど、桜なんて咲くわけないか。分かりきってるのに。冬真の馬鹿がうつったのかも。
一度教室に戻って外に出ると、待ち構えていたかのようにカメラや花束を手にする下級生達がずらりと並んでいた。
「先輩!」
「写真一緒にお願いしますっ」
みんなお目当ての卒業生達に群がり、すごい人だかりになっていく。その中に見えた冬真の姿。一瞬で捕らえた。
「…と、」
「冬真くんっ」
あたしが呼ぶよりも早く、誰かが冬真の名前を呼ぶ。あたしはこの子を知ってる。同じ学年で、隣のクラスで、陸上やってる子。放課後のグランドで隣で練習するサッカー部の練習をいつも見ていた。その視線の先にいたのは、必ず冬真だった。
そして、あたしはその子の進路先も知ってる。確か、城南の推薦の枠をとってた。

