あたしは冬真を避けた。みんなにケンカしたのって心配されたけど「そんなことないよ」って笑ってごまかした。
冬真がときどき不機嫌そうにあたしを睨んでるの知ってたけど、気付かないふりした。だって冬真と喋ったって辛いだけだもん。うまく笑えない。
もう今までみたいに馬鹿できないよ。だってもうすぐ卒業式。そしたらこの関係も終わる。
「なあ」
下級生達より早い春休みに入る前、冬真が帰ろうとするあたしを呼び止める。
できれば聞こえないふり、したい。なんてこんな校門の前でばっちり待ち伏せされちゃ無理だけど。
「なあってば」
「…なに?」
「俺、春花になんかした?なんで怒ってんの?」
「別に、怒ってなんかないけど」
ただ、冬真の顔見ると泣きそうになるから。
「じゃあなんで避けるんだよ?」
冬真の声がいつもより低くくて怒ってる。当たり前か、冬真からしたら理由もなく避けられてるんだもんね。二人の間に強い風がふいて、あたしは首をすくめた。三月に入ってからちょっとはあったかくなったけど、寒いよ。まだまだ寒い。
「避けてないよ。寒いし、帰る」

