「それが10年前の事件」 あたしは黒崎の腕の中で無機質に言った。 「…そっか…」 黒崎は優しくそう返す。 「何で俺に言おうと思ったんだ?」 「朝、突然あんたの顔が頭に浮かんだ。 そしたら連絡網があって…」 気がついたら目の前に汗だくの黒崎がいた。 嘘つきの黒崎は、 真冬の2月にいっぱい汗をかいていて、 急いで来てくれたことが容易にわかった。