それがただならぬ空気だということは容易に察しがついた。 『だから!うちにそんなお金はないって言ってるでしょ!!』 そう叫ぶ母に、男は手をあげた。 パシンッ 乾いた音が響き渡る。 それで火がついたのか、 父は何度も何度も母を殴り続けた。 それが父だと認めたくもない。 そしてその瞬間は訪れた。 一瞬の隙をついて、母が花瓶で男の頭を殴打したのだ。 即死だったかは知らないが、 それが致命傷となり男は死んだ。 目の前に広がる赤い血。 血 血 血