優里に初めて出会ったころ、 あたしは家族を失ったショックでほとんど放心状態だった。 食事もろくに喉を通らず、 1日中病院のベッドの上で呆けていた。 『美玲ちゃ~ん』 そんなある日、彼女はやってきた。 院長の娘が精神科医をやっているという話は聞いていたし、 名札に“水無月 優里”と書いてあったから容易に予想がついた。 『美玲ちゃん、私オセロやりたいんですぅ。 ルールを教えていただけませんかぁ?』 『……るーる…?』 『はい』 優里の第一印象。 “馬鹿”。