「受験生なのに、授業いいの?今授業中でしょ?」


『……千里眼?』



わざと向こうが一番イタイ場所をつくと、少し間を開けて逃げられた。

あんなに切羽詰まってた真田をサボらせてるのはあたしかと、嫌になる。


自分一人の問題でありたい。
あたしが休んで、友達にまで被害が及ぶのは不本意だ。

そうしたらあたしは、大事な人相手に途端に加害者になる。



『自惚れんなよ。あんたのためにサボってるわけじゃないかんね。息抜きも大事なんだから』


「…真田こそ、千里眼?」



受話器越しにかかった息は、真田がふっと笑ったから。

お世辞にも耳に心地いい音とは言えないその雑音も、今は胸を暖かくさせた。



『王子様と何かあったんでしょ?』


「王子様って言わないで」



もう、あたしの中で相良くんは「相良くん」なんだから。

確かに相良くんはあたしにとって王子様だけど、相良くんをそう呼ぶのはなんだか嫌だ。


“王子様>相良くん”

って言ってるみたいなんだもん。