「…なぜか、わからないけど」
ゆっくり、少しだけ近づいた気配に、身体が固まった。
だって、こんな、
こんなのって知らない。
こんなとき、どうすればいいのかあたしは知らない。
……誰か、教えてよ。
こんなとき、どうすれば可愛いの?少しでも可愛く写る?
「岡本さんのことが心配になって、戻ったんだ」
「始めは保健室行ったんだけどもう閉まってて」
顔を上げた先、相良くんの方。
合わなかった眼に、寂しくもほっとした。
相良くんは、あたしと同じように、クリーム色の床を見てて。
あたしは少し気を緩めて、相良くんを見つめることができた。
「……俺、気づいたらここにきてた」
ゆっくり、そう言って相良くんは顔をあげた。
(……夢、じゃないよね)
合った眼が、そらせない。
そらしたくないのかもしれない。
もう、わからない。気持ちが、上手くまとまらないよ。
(ねぇ)
でもそれでいい気がした。
―――適当じゃなく、
もう深く考えたくない。
流れに身を任せたい。
―――そう思うから。
(期待してもいいの?)


