「………」
相良くんは目を少しだけ見開いて、あたしは戸惑った。
普段こんなに積極的になれないくせに、今こんなに自然に素直になれたから。
不思議と赤面したり、焦ったりはしない。
ただ、心臓だけがドキドキと、心地いい速さで脈打って。
「…お礼が言いたくて」
「………」
「傍にいてくれて、ありがとう。おかげでもうよくなったよ」
答えがなくて、口を閉ざしてしまいそう。
不安で、胸が潰れそう。
だけど、あたしは話し続けた。
生理だって知られたことも、部活は終わってたのに待ってたなんて、なんか気持ち悪かったかなとか、そういう考えも、
ここに居るために消した。
変な言い訳で相良くんの前から逃げ出してしまわないように。
「寝過ぎだって話しだよね、ははは」
渇いた笑いしか、でなくても。
「俺は、岡本さんに会いたくて戻ったよ」
――静かに、漏れた言葉に
閉ざされていた荒れを知らない唇が開いて
一人でにペラペラ話しだしてから、ずっと冷たいクリーム色を見つめていた視線が揺れた。
信じられなくて。
だけど、この胸は期待に無駄に膨らんでいたから、あの少女漫画を読んだときみたいな、突然の悶えるような感覚にはならなかった。


