どうしてだろう。


「相良くんが好き」


そう思うたびに、
胸が苦しくなって。

好き、と実感するたびに、
どんどん気持ちが膨らむ。

止まらなくなりそうで
あたしを見失いそうで


(怖い)


好きすぎて、怖い―――








「……もう、ここで大丈夫」



相良くんの方を見ることはできない。

相良くんは他に好きな人がいるかもしれない。もしかしたら、彼女がいるかもしれない。

…なのに、あたしはこんなに好きで、止まらなくて、こんなの知ったら相良くんはどう思う?


やっぱり気持ち悪いかな?
嫌いになる?迷惑?怖い。



「もうすぐだから」


嘘は言ってない。

本当にうちはもうすぐで、あとふたつ曲がり角を曲がればすぐ見えてくる。

うちが中学に近くてよかったと思う。




「そっか、じゃあここで」























* * *





相良くんは

『またね』、とは
言ってくれなかった。


かわりに、
『気をつけてね』って
あっさりあたしに背を向けた。


……傷つくのはおかしい。
わかってるけど、胸がぎゅう、と締め付けられたみたいになって、辛かった。


この気持ちの名前を、
あたしは知らない。