ピチャン





水溜まりに跳ねる雨音が

コンクリートに跳ねる雨音が


連続する雨音だけが、響く。











『またね、』


『ありがとう岡本さん』




彼の言葉が、頭の中を何度も行き来して離れない。

わざとだろうか?
あの間をとった話し方。



「落ち着く」 「ときめく」

あたしの気持ちに、対儀語をどっちも含ませる。



彼は魔法使いなんだろうか?




(不思議………)




『また』があるんだ。


彼がそう言ったからそう思える。『また』がある。


これで終わりだと思っていたけど。







その背中が見えなくなっても、しばらくあたしはそこを動けないでいた。




(………ちがう)






――――「動かない」でいた。