「………どうしたの?」



イヤホンからもれていた音もなくなった沈黙の中での一声。

どうしたの、とは実に不思議な質問だとあたしは無意識的に、首を傾げた。

この場合、普通「なに?」とか「え?」とか、それか無言になってしまうと言うのに。


この人は緊張した面持ちで、
あたしに「どうしたの」と問うたのであるからして。




「あの…なに、してるんだろうって、思って、つい」



のぞき見しちゃったの。


完璧に赤面して吐いたあたしのその言葉に、男の子は目を丸くした。

笑いもせず、ただ、静かに。












黒よりの紺のブレザーが似合うオレンジ系の茶色い頭。

この寒空と、同じ色のカーディガンの裾からのぞく指先。


色白の頬は、男の子にしてはふっくらしていて(それも綺麗に)
同色の鼻は、冷気によって、薄赤色に染まっている。



特別整った顔つきじゃない。
特別素敵な声じゃない。

それでも寒さを感じさせない表情で、いつからそこにいたのか横顔の綺麗な男の子は、雪の国から来た王子様みたいだった。