そして、温泉旅行当日の土曜日。
「わあっ……海がこんなに近くに見えるんだ!きれいだよなあ!」
「そうですね。まだ泳ぐには少し早いですけど。」
旅館の窓から外を眺めて目をきらきら輝かせるディザスに、結祢が微笑みながら言う。
「はしゃぎすぎて落ちるんじゃねえぞ。たくっ……海ぐらいで喜びすぎなんだよ、ディザスは。」
「……とか言いつつ、ちゃっかり窓際に座っていますね、クレイ君。」
「ああっ?俺様をディザスと同じにすんじゃねえ。俺様は潮風に当たりてえだけだ。」
そう言いつつも、クレイの視線は海へ向けられていた。
(本当、素直じゃありませんね、クレイ君は。)
口には出さないが、結祢は心の中でそう思った。


