「あっ……す、すみません。私としたことが柄にもなく声を荒げてしまって……。」
結祢は恥ずかしそうに顔を赤らめて、椅子に座り直した。
茶色い瞳は、周囲を気にしているようにせわしなく左右に動いている。
「……僕の方こそ、ごめん。結祢ちゃんのプライベートに突っ込みすぎて、恥ずかしい思いさせた……。」
「せ、星駆君は悪くありませんよ。私がムキになってしまったのが悪いんです……。」
結祢と星駆の間に気まずい空気が流れる。
結祢に注目していた客達は、既に彼らに対しての興味を失い、読書や勉強などに視線と興味を戻していた。
「あの……」
「えっと……」
全く同じタイミングで口を開き、結祢と星駆はそっちからどうぞと譲り合う。


