―――楓!


「…………氷沙?」

「え、何? 楓、何か言った?」


戸惑うように問いかけた南の声を無視して、脚は勝手に感覚が告げるほうへと走り出していた。


――なにやらかしてんねん、あいつは!


頭の中に響いた声は、確かに氷沙のものだった。

沸き立つ焦燥感は、思うようにならない氷沙への苛立ちか、波樹へ向かうものでもない。
読みの甘かった、自分へだ。