「本気だしなさいよ。女だと思って手を抜いているのね」


小春は浅木から離れた。


二人は普通の倍以上の間合いがあいた。

小春が息を整えて下段に構えた。


「これならどう」


小春がすごい跳躍力で飛び込んでくると同時に下から突き上げた。


「うっ」


木刀にけっこうな衝撃が伝わった。


浅木は耐えきれず剣を宙にとばされた。そして、腰からへたりこんだ。


「ま、まいった」

と、手を挙げて小春の二打目を遮った。


「兄さんのより早いでしょう」


少し、誇らしそうに小春が言った。


「浅木君、今のが小太刀の弱点を消し、そして、利点を生かした飛び込み突きじゃよ。小春の兄の得意技じゃったがな」

と、重爺が解説した。


「ええ、本当に参りました。小春さんには兄さんがいたのですか」


浅木が尋ねた。


「まあ、いずれ知られることになるだろうから話すが、小春の兄は氷雨と言って生きていればちょうど浅木君と同じくらいの年になるかのう」


「亡くなったのですか」


「ああ、忍者の宿命とはいえ、遺品はないが、鳥羽伏見の戦いと……」


重爺は少しうつむいて話した。