また、浅木は立ち上がり、氷雨に打ちかかっていった。

氷雨は受けてから、間合いをあけて離れた。

「そんなに死にたいのか」

氷雨は瞬歩の体勢をとった。

「瞬歩」

浅木にそれを受け流す体力は残っていなかった。

氷雨の剣が浅木の体に届く瞬間、誰かがその剣筋を曲げた。

浅木はその場に座り込んだ。その前に藤田がたっていた。

「お前は新選組の齊藤」

と、氷雨が言った。

「俺の昔の名前を知っているとは光栄だな。今は藤田だ」

藤田はニヤリと笑った。

「もう、この屋敷は警官隊が取り囲んでいる。逃げ場はないぞ若宮氷雨。いや、元お庭番のお頭、鬼陰」

警官隊が続々と部屋に入ってきた。

「まだつかまる訳にはいかないんだよ」

氷雨は煙玉を取り出し床に投げつけた。部屋中に煙が満たされた。

氷雨は小春を抱えると壁の一部を押した。からくりになっていてその中に姿を消した。


煙が収まってから、部屋には小料理屋の使用人を連れて重爺達も入ってきた。

重爺は倒れている浅木を見つけた。

「浅木君。大丈夫か」