藤田はまだ塀に寄りかかって残っていた。


「いいことを教えてやろう。アヘンの出処は横浜の桐野商会だ」


「なぜそんなことを教えるんですか。そこまで分かっているなら取り締まるのがあなた達の役目でしょう」


浅木は怒って言った。


別な警官が小走りに藤田のもとに走ってくると耳打ちした。

藤田は報告を黙って聞いていた。話が終わると部下は軽く一礼して去っていった。


「昨日、奴は桐野商会に若い娘が入ったのを見たらしい」


そう付け加えると藤田は帰っていった。