「ふぅ、こんなもんか」

俺は今、引っ越し用の荷物をまとめているところだ。

長い間暮らしていただけあって荷造りのダンボールがすごい数になっている。

早朝から始めたのだが、窓の外からはすでにカラスの声が聞こえている。

「だあー!疲れた~っ!」

その場に大の字に寝転がる。

全身の筋肉が悲鳴をあげていた。もう、一歩も動けん。

ふと、テーブルの上に置いてある写真立てに目をやる。

笑いながら俺の両頬を引っ張っている優希と、いきなりのことにびっくりした様子の俺が、そこには写っていた。

幸せだった日々が、走馬燈のように駆けめぐる。

目頭が熱くなってきた。…と、いかんいかん。

もう泣かないって誓ったからな。

右手を真上に掲げる。その薬指には、ダイヤがついた指輪が輝いていた。




あいつと結婚して、別れてからもう一年が立つのか…。

あの日のことは、今でも昨日のことのようによく覚えている。