俺は、夢を見ているのだろうか?

優希は、もういないはずだ。

だったら、今、目の前で笑っている優希は何だろう。

妄想? 夢?

試しに、頬をつねってみる。

「いたっ」

「…何やってるの?」

冷ややかな目で見られる。

「い、いやぁ、はは」

強くつねりすぎたようで、まだヒリヒリしている。

夢じゃ、ない。

何とも言えない嬉しさが、胸にこみ上げてくる。

「…優希、生きて、たんだ」

一歩近づき、抱きしめる。

が、その手は空をきった。

「な、なんで!?」

俺の手は確かに優希に届いていた。

その手が優希を通り抜けていなければ。

「ごめん、京介…」

寂しそうに優希が微笑む。

「私、死んじゃってるの」

わかっていた。確かに俺は聞いていたじゃないか。

心電図が終わりを告げる音と、声を荒げ泣きじゃくるおばさんたちの悲鳴のような叫びを。