忘れはしない

特に会話もなく、二人でぼーっと空を見上げていた。

体育館からは、生徒の名前を読みあげる先生の声が聞こえてくる。

ちらっと、優希の顔を盗み見る。

相変わらず、ぼーっと空を見上げ、なにか呟いている。

…どうやら、雲の数を数えているようだ。

ひまなやつだな。

不意に、優希がこちらを向き、目が合った。

全てを見透かされるような瞳。

再び、動悸が激しくなる。

「ん? なに?」

「い、いや、何でもねえよ」

「そう」

そう言って、また空を見上げる。

…なんか調子狂うな。