「京介さん……」

「自分でも、馬鹿な考えだってわかってる。あいつは、優希はもういないんだって、頭では理解しているんだ。でも……っ」

俺は弱い人間だ。どんなに強がっても、こんな時、どうすることもできず、ただ子供のように泣きじゃくることしかできない。

早紀ちゃんのようには、笑えない。

「……無理しなくてもいいんです。今、自分にできることを精一杯やっていけばいいんです。ただ、自分を傷つけるようなことはしないでください……。貴方は、何も悪くないんです」

そんなんじゃお姉ちゃんは浮かばれませんと、小さくこぼした。

早紀ちゃんの言葉が、俺の胸を突き抜けていく。

俺は、自分が許せなかったんだ。
大切な人を守れなかった、不甲斐ない自分を。

だから、自分を責めた。それしか、この心に空いた穴を埋める方法がなかったから。

でも、本当は誰かに許してもらいたかった。
もう、いいんだよって、言ってもらいたかったんだ。

「優希は、許してくれるかな? 笑っていてくれるかな?」

彼女が、俺を抱きしめる腕に力がこもる。

「そんな当たり前のこと、聞かないでください。お姉ちゃんは、とても幸せでしたから」

「ありがとう、早紀ちゃん。ほんとに……、ありがとう」

すぐには、無理だろう。一生かかっても、無理かもしれない。でも、ちょっとずつでもいい。前を向いて歩いていこうと思えた。

だから、優希。今だけは泣かしてくれ。お前を、本当に愛していたから。

早紀ちゃんの腕の中で俺は、声をあげて泣いた。

優希に届けと願いながら。