「お母さん、和也に電話してくるね」






病室に戻りながら私はお母さんに、努めて明るくそう言った。








お母さんはこの数時間で一気に老け込んだように見えた。




お父さんは普段と変わらないように見えたが、目の下のクマが、前日に眠れなかった事を告げていた。






『癌』という病気は、本人だけでなく、周りの心をも蝕んでいく。








和也は……大丈夫だろうか?








癌で手術をしなくてはならない自分より、和也の事が心配になった。