教室に入ると温かい空気があたしを包んだ。


「おはよ、海音。」

「おはよう、香織。」


見慣れたクラスメートに笑って
マフラーを外しながら自分の席へ向かう。




あれ?
香苗、まだ来てないのかな?


ポツンと空いた斜め前の席に香苗の姿が見当たらない。

あたしはカバンを机の横にさげて辺りを見渡した。




「香苗、風邪だって。」


ふいに聞こえた声にあたしは振り返った。



「風邪?香苗が?」

「らしいよ。さっき浦吉が言ってた。」



浦吉(うらよし)と言うのは
さっき校門で会ったあたし達クラスの担任だ。




「あたし今日、日直なんだ。最悪。」


教えてくれた雅美の机には
ボロボロの学級日誌に

『欠席者 田村香苗』と書かれていた。